このプログラム、流行っているからいいんだろう、痩せるのだろう…では痩せない。
競技、レッスン、体調管理やダイエット…一流インストラクターはカラダをこう考える。
全国大会に進んだら優勝して…
- 記者
- 本日はよろしくお願いいたします。
- 野村
- よろしくお願いします。
- 記者
- さっそくですが元世界チャンピオンに、まずは優勝までの道のりとか苦労話…をお聞きしたいと思っていましたが、でも最初に出たDole Cup全日本エアロビック選手権でいきなり優勝されたんですね。ということは苦労は無かった?
- 野村
- そうですね…苦労というほどのものは無かったですね。初めて出た大会で西日本代表になって、全国大会に進んだら優勝してしまって…えーいいの?という感じで…すみません(笑)。なぜ優勝できたのかは、いまだに不思議と言えば不思議で。ただ当時は今みたいに激しい技は無かったですから。
- 記者
- なるほど。そして世界大会を目指されたんですね。
- 野村
- 最初は世界大会が無かったんです。その後に色んな国が始めて、それで世界大会が出来ました。国内大会は競技なのか単なるイベントなのか区別が出来てないくらいの時代で、次は出ちゃダメって言われたりもしたし、気分が乗らなかったんです。その後に世界選手権が出来てハッキリ目標が出来て、そこで優勝してやろう、世界の舞台に立つぞと…僕ガイジン見ると燃えてくるんですよ(笑)。
- 記者
- それでDole Cup全日本エアロビック選手権で優勝されて、その後は多くの…実はプロフィール欄にも書ききれない程なんですが、優勝を重ねられた。勝つためのコツや戦略などあったんでしょうか?
- 野村
- コツとかは、うーん…特には。まあ一回世界で優勝すると次からの国内は楽でしたね。特に世界の場合は。
野村健一郎プロフィール
ライフスポーツKTVにて多数のプログラムを指導する人気インストラクター。
競技エアロビック、シングルで6回の世界チャンピオンに輝き“ミスター・エアロビック”と呼ばれた。ペアやトリオでの優勝歴、国内大会での優勝歴も多数。
妻はやはりシングル日本チャンピオン野村千絵(旧姓:三好千絵)。夫婦でのペア世界チャンピオンでもある。
近年ではエアロビック ダンス ワークアウト『エアロスター』の振り付けにも携わる。コンディショニングエクササイズGRAVITY、BOSU、ピラティスほか様々なプログラムのマスタートレーナー資格も持つ、スポーツインストラクターの第一人者。
■賞歴
- 87 Dole Cup全日本エアロビック選手権 優勝
- 91 SUZUKI WORLD CUP ペア優勝
- 92 WORLD AEROBIC CHAMPIONSIP トリオ優勝
- 93 SUZUKI WORLD CUP シングル優勝
- 94 SUZUKI WORLD CUP シングル優勝
- 95 WORLD AEROBIC CHAMPIONSHIP シングル優勝
- 96 SUZUKI WORLD CUP シングル優勝
■書籍
- 「なぜ月曜の朝はつらいのか?」(監修)2009年 東京書籍
■舞台
- 「SEKAI」 2009年 DDDプロデュース公演
エアロビクスが嫌やなぁ
- 記者
- 少し話は戻りますが、いつからエアロビクスを始められたんですか?きっかけは?
- 野村
- 高校を卒業して専門学校に行ったんです。スポーツ系、社会体育系ですね。その学校の授業にエアロビクスがあったという…それだけなんです。
- 記者
- やりたかった訳ではなく?
- 野村
- 全く、やりたかったどころか。必須だったので仕方なく…。
- 記者
- 実はすごい素質を持っているとも知らず(笑)。競技としても意識はしていなかった?
- 野村
- 無いです無いです。それどころか…その学校への進学が決まったとき、授業にエアロビクスがあるらしいぞ、嫌やなぁって話をしてたんです。
日本に入って来たばっかりだったので、やっぱりレッグウォーマーにハイレグのお姉ちゃんというイメージがあって、なんで男がやらなあかんねん、っていう。 - 記者
- まだそういう時代だったんですね。競技として出てみようという、きっかけは?
- 野村
- 専門学校の終わりぐらいなんですが、先輩がエアロビクスの大会に出て全国大会で3位になったと。それまで男のエアロビクスを見たことがなかったんですけど、これだったらカッコいいな、出てみたいなと思ったのが最初ですね。
超新米なのに日本一のインストラクター
- 記者
- インストラクターを始められたのは?
- 野村
- 学校を卒業してから運動不足になって来て。ある日パチンコで勝ったお金で友達とスポーツクラブに入会して、何回か行っているうちに、インストラクターやってみないかという話になって。1年くらいで辞めるつもりで始めたんです。
- 記者
- 軽い気持ちで。
- 野村
- アルバイト感覚で。ところが…9月にインストラクターとしてデビューして、その年の12月に大会出たら優勝したので、辞めるに辞めれなくなって。
- 記者
- 競技で優勝しちゃったとなると、そう見られますよね。
- 野村
- そうそう、まだ始めて3ヶ月の超新米なのに…日本一のインストラクター。レッスン受けにくる人もそう見ていて、いやいや俺まだ新米やねんけど…。それはすっごく苦労しました。
- 記者
- やっと苦労話が聞けました(笑)。競技とレッスンはまた別物ですか?
- 野村
- そういう意味では違いますね。レッスンはダイエットのためとか健康のためとか、目的のためにプログラムされていて、生徒さんをリードして行って成り立つもの。ただ、スタジオの45分と競技の1分半が別物かって言うと、出力を大きくして表現しているだけなので、やっていること自体は同じという感覚です。少なくとも僕の中では。
エアロビックの発祥
元はケネス・クーパーが提唱した、心拍数をどんどん上げて行って、維持して、落として、というのが心肺機能を高めますよ、という理論なんです。
それをダンスの中に取り入れたのがジャッキー・ソレンセン。そして女優のジェーン・フォンダがブームを作って広めた。ジェーン・フォンダの功績はすごく大きいですね。
当初はハイインパクト、つまり大きな負荷の掛かる動きが中心で、現在は負荷の小さいローインパクトを中心とした動きが一般的です。
笑顔の方が得点が高い?
- 記者
- 競技は1分半なんですね。スタジオレッスンは45分とかですから、ずいぶん違いますね。
- 野村
- むちゃくちゃしんどいですよ。大会前に通しの練習をするんですけど、始めるのにすっごい勇気がいるんですよ(笑)。800m走を走ってる間に、腕立てとかスクワットとかやってるような感覚なんですよね。
- 記者
- 走ってる間にスクワット。かなりハードですね(笑)。でも競技は笑顔でやってるイメージがありますが、その方が得点が高くなるんでしょうか?
- 野村
- みんなそう仰るんですけどね、実は違うんですよ。逆に笑いすぎると過剰アピールで減点になるし。
- 記者
- そうなんですか?
- 野村
- 特にいまはね。国際体操連盟の一部になって。でもみんな笑ってますけどね。
なんかね…やってるとハイテンションになってきて、しんどいことやってて顔もしんどい顔って、見てる方も嫌なんで。審判に対してはしんどくないぞみたいな感じになってきて…自然にああなるんです。でもほら、フィギュアスケートもシンクロもみんな笑ってるじゃないですか。 - 記者
- ああ、そう言われればそうですね。
ところで奥様と元々、ペアを組んでいらっしゃったんですね。いまでもペアで踊ったりされるんですか? - 野村
- 別れるに別れられず…嘘ですよ(笑)。BAILABAILAなどイベントでは、時々一緒にやってます。
- 記者
- 奥様に振り付けやレッスン内容などをご相談される事は?
- 野村
- 相談っていうのは無いですね。今日こんなステップ考えたんだけどさあ…くらいは言いますけど。でもお互いプロとしてのプライドがあるから「フウン…」みたいな(笑)。「そのステップはおかしい」とかは、お互いのポリシーがあるので言えないですね。たまに言っちゃいますけど。
プレコリオスタイル
プレコリオスタイルとは、決められた振り付け(コリオ)に合わせて運動をするスタイルのエアロビクスダンスワークアウト
自分の体の行きたいように行かせてあげた方が良い
- 記者
- 色々なクラスをレッスンしていらっしゃいますよね。
- 野村
- そうですね。エアロスター、オリジナルのエアロビクス、あとBAILABAILAも受け持たせて頂いています。
- 記者
- 実は私もエアロスターのレッスンを受けさせて頂いておりまして。
- 野村
- ああそうですか。
- 記者
- でも楽しいですよ。ダンス要素が色々あって。エアロビクスのクラスとも感じが全然違いますし。
- 野村
- まあ色々ありまして今の内容になりました。頑張ってください(笑)。
- 記者
- オリジナルのレッスン内容は、どのようにして考えられるんですか?
- 野村
- そうですね…振りの中でのボリューム、ここで強度を上げて、ここで難しいのを入れてとか、音楽に合わせる時もあるし…。
- 記者
- ああ…なんとなく、分かるような分からないような…。
- 野村
- スタジオのエアロビクスって、実は教科書が無いんですよね。
- 記者
- そうなんですか?
- 野村
- ひとつの決まった動きがあるとするじゃないですか、すると踵、つま先、手がどうのこうのと…みんなそんなとこにこだわって、議論してらっしゃいますね。
- 記者
- はい。
- 野村
- そうじゃなく、形にこだわらないで、自分の体の行きたいように行かせてあげた方が良いと思うんですね。最初からどうすれば良いかって考えるんじゃなくて、まずやってみる。やってみて、何か違うなと思えば自分で修正してあげれば良いし。そう考えると競技でもスタジオでも、気持ちよくラクに動けますよ。
- 記者
- なるほど。型にはまらない、ってことですね。
- 野村
- そうです。
強い意識、ですね。
- 記者
- いよいよ本題ですが(笑)。レッスン、体力、筋力、スタイル作り、ダイエット…といったことについて、お聞かせください。まずはレッスンについて、受けるにあたって、気をつけた方が良いのはどんなことでしょうか?
- 野村
- 強い意識、ですね。このプログラム、流行ってるから、痩せるんだろう…では、まあ思った通りにはならないです。
- 記者
- はい。ならないんですよね(笑)。
- 野村
- 痩せるなら痩せる、筋肉を付けるなら付ける、まずその意識を持ってやれば、何をやっても効果があると思うんです。逆に…痩せたいなー、筋肉付けたいなー、このプログラムが良いのかなー、でやってしまうと効果が上がらない。ストイックというのとは違って、自分はこうする、こうなるという強い意識を持ってやるということです。どんなレッスンでも、筋トレでも、ですね。
- 記者
- レッスンやトレーニングの量については、どのようにお考えですか?
- 野村
- やりすぎないこと。これは重要ですね。やりすぎでなく、中間が一番いいんですが、実はけっこう難しいんです。エアロビクスを受けること自体が趣味なら、ケガしない範囲で好きなだけやってくれれば良いと思います。でも何か目的があってやるなら、何をやるかの種類だけじゃなくて、練習の量にも気を遣って欲しいですね。
- 記者
- 通いはじめとか、気分が乗ってる時は、つい色々と沢山やってしまいますね。
- 野村
- そうそう。スポーツ心理学にもあるんですけど、例えばジョギングを始めるとするなら、初日は玄関まで、次の日は玄関を開けるだけ。その次の日は玄関を出て3歩、次の日は10m、そして…というふうにちょっとずつ進めて行く。さあやるぞ!と意気込んで初日からいっぱい走っちゃうと、しんどくって続けられなくなっちゃうし。それに急に運動したら体が拒否するんですよね。
- 記者
- 自分のことを言われているようです。気をつけます…(笑)。気を取り直して、初心者にオススメのプログラムはどのようなものでしょうか?
- 野村
- エアロビクスなら、やはり最初はステップですね。慣れてなくても楽しめますし、意外と奥が深くて楽しいと思います。初心者の方は特に、ちょっとずつね。入会した日にガッツリやらないように。
- 記者
- 分かりました(笑)。中上級者向けのオススメは?
- 野村
- プログラムとしては特に無いんですが、自分の動き、姿勢、フォームですね。これを見直してみるのが大事ですね。慣れているというのと上手は違いますが、レッスンならステップに、トレーニングなら重りに、慣れてしまっているという状態があるんですね。それを見直すことで、もう一段上に上がれると思います。
夜遅くは絶対食べない
- 記者
- 体調管理はどのように行われていますか?例えばお食事はどのように気をつけていらっしゃいますか?
- 野村
- 食事は基本的な事ですけど良く噛んで、バランスよく食べる。量は、食わないと痩せます。
- 記者
- レッスントレーナーは、運動量が並じゃないですもんね。
- 野村
- でも夜遅くは食べないようにしてます。どうしてもそういう状況になったら、例えばイベントの後なんか僕もよくなるんですけど、迷ったら食べずに寝る。どうしてもお腹が空いてたら少しは入れた方が良いかもしれないけど、大してお腹が空いても無いのに夕飯という習慣で食べてしまうようなこともあるし、だったらやめておいた方が良いですね。その方が朝スッキリ起きて、疲れが取れます。
- 記者
- あ、いいですね。
- 野村
- 他は体調管理って程のことは特に意識してなくて、できれば早めに寝るように…あまり出来てないですが、早めに寝たいなと。あと体のコリを残さないようにしてますね。
- 記者
- 体のコリですか。
- 野村
- そう、そのために背中と足の裏をよくほぐすようにしてますね。全体に、鍛えるというよりも機能を良くする、例えば背骨の動きを良くするような事は仕事のため、ボディケアとしてもやってます。そういったことを勉強するのも好きなので。
体の刺激は気持ちの刺激
- 記者
- フィットネスクラブやスイミングスクールに、通おうかな、どうしようかな…とお考え中の方に、メッセージとかアドバイスがあれば、お願いします。
- 野村
- そうですね…ちょっと勇気を出して、ライフスタイルに組み込んでみて下さい。フィットネスとか水泳、ほか何でも良いんです。なぜかというと、体の刺激は気持ちの刺激になるので。生活の中に体への刺激を何か入れてもらえれば、生活の色んな、仕事やお家のこととかにも、きっといい刺激、いい影響になると思います。加えてみても良いと思います。
- 記者
- 本日は、長々とありがとうございました。
- 野村
- ありがとうございました。